建築設備士|7分で分かる建築設備士の概要、合格難易度や対策

建築設備士

建築設備士とは?

 建築設備士制度は、建築設備[空調・換気、給排水衛生、電気等]の高度化・複雑化が進みつつある中で、建築設備に係る設計・工事監理においてもこれに的確に対応するために、昭和58年、建築士法の改正時に創設された国家試験の一つです。(建築士法第20条第5項)

独占業務はあるの?

 残念ながら、弁護士や公認会計士のように資格独占業務はありません。建築設備士が行う設計業務については、多くの人が資格なしでも従事しています。

最大のメリットは一級建築士の受験資格

 建築設備士を取得する最大のメリットとしては、一級建築士、二級建築士及び木造建築士について、実務経験なしで受験資格が付与されることです。

 本来、一級建築士であれば建築学科を卒業する必要があったり、二級建築士をまずは取得しなければならなかったりと、受験資格の敷居が高い資格でした。

 しかし、令和2年の法改正により、受験資格要件が緩和され、建築設備士を取得することで、一級建築士を受験することができるようになりました。

  1. 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
  2. 二級建築士
  3. その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者等)
  4. 建築設備士
一級建築士の受験資格

試験制度は?

試験区分等

 建築設備士の試験は一次試験と二次試験の二次試験制となっており、、一次試験では選択式の学科試験、二次試験は記述式の設計製図試験となります。さらに、二次試験では「空調・換気、給排水衛生、電気」の3つの選択科目があり、受験者はその中から自身の専門分野に応じて選択する必要があります。

試験日程

 建築設備士の試験日程は下表のようになっております。試験の申し込みは前年度に締め切られてしまいますので注意が必要です。また、一次試験の合格発表から二次試験までの間は1ヶ月ほどしかありませんので、自己採点が必須となります。一次試験で自分が選択した解答は必ず問題用紙に控えるようにしましょう。

 なお、後述する受験資格の実務経験は受験日時点となりますので、例えばその年度の4月1日で実務経験を満たすのであれば問題ありません。

スケジュール令和4年度
申し込み前年度の3月中旬〆切2月28日午前10時
~3月18日午後4時
一次試験6月の第3日曜日6月19日
合格発表(一次)約40日後7月28日
二次試験8月の第3日曜日8月21日
合格発表(二次)約70日後11月2日

受験手数料

 建築設備士の受験手数料は、36,300円(他に、ネット受付事務手数料が必要)となっており、一級建築士の受験手数料が17,000円であることを踏まえると、高額です。

 受験手数料が高額になっている理由としては、選択科目として「空調・換気、給排水衛生、電気」の3つが存在しているため、それぞれの科目に対して諸経費が掛かるためです。

受験資格

 建築設備士の受験資格は下記の「1〜3」のいずれかを満たすことが基本となっており、それぞれに所定の実務経験が必要となります。

  1. 学歴を有する者[大学、短期大学、高等学校、専修学校等の正規の建築、機械又は電気に関する課程を修めて卒業した者]
  2. 一級建築士等の資格取得者
  3. 建築設備に関する実務経験を有する者
建築設備士の受験資格

 例えば、実務経験のみであれば9年の実務経験が必要となりますが、「第3種電気主任技術者」や「1級電気工事施工管理技士」の資格があれば2年の実務経験のみで資格要件を満たすことができます。

合格率

 建築設備士の合格率は下図のように推移しています。令和2年度に法改正に伴って新試験制度が始まりましたが、その初年度は1次試験および2次試験ともに合格率が直近最低をマークしました。試験内容の傾向が判明した令和3年度や令和4年度の合格率は若干上向きとなったものの、旧試験制度より合格率が低い状況となっております。

1次試験の概要

出題科目と合格点

 建築設備士の1次試験は、「建築一般知識、建築法規、建築設備」の3つに分かれており、下表となります。

 出題は全て選択形式で合計105問あり、メインとなる建築設備が60問と多くなります。また、合格点は105問中、70点で合格となりますが、各出題科目で足切り点数があるので注意が必要です。

 合格点に関しては、採点の結果、試験の難易度に応じて補正が行われる場合がありますので、自己採点が70点を切っていたとしても、正式な採点発表があるまで諦めずに2次試験の準備を行いましょう。 

出題科目出題数合格点出題内容
建築一般知識27問13点建築計画、環境工学、構造力学、
建築一般構造、建築材料及び建築施工
建築法規18問9点建築士法、建築基準法その他の関係法規
建築設備60問30点建築設備設計計画及び建築設備施工
合計105問70点66%の得点が必要

時間割

 1次試験の時間割は下記のようになっています。「建築一般知識」と「建築法規」は同じ時間帯で行われ、午前に2時間30分で実施されます。「建築設備」は休憩や注意事項等説明を挟み、午後に3時間30分で実施されます。

 周囲の受験者の経験を伺ってみると、「建築一般知識」と「建築法規」は時間不足になり、一方で「建築設備」は時間が余る方が多いようです。

 特に、「建築法規」で必須となる法令集を調べる力を養わないとどんどん時間がなくなってしまいますので、事前に十分な練習が必要です。

時刻時間内容
9時45分~10時15分注意事項等説明
10時~12時30分2時間30分建築一般知識、建築法規
12時30分~13時30分1時間休憩
13時30分~13時40分10分注意事項等説明
13時40分~17時10分3時間30分建築設備

必須テキスト

 建築設備士の1次試験は予備校に通わずとも、独学で十分に対策可能です。必要なテキストについては、別記事でまとめていますので、下記を参照ください。

2次試験の概要

出題課題

 建築設備士の2次試験は、毎年テーマが出題され、その課題に沿った出題がされます。出題課題は下記のような建物の特徴を示すキーワードのみで、具体的な内容は出題されません。

 出題課題に応じて、想定される設備を予想する必要があります。これに関しては自身で想定するのは大変手間と労力がかかりますが、後述する「講習会」というものが存在しております。(一社)日本設備設計事務所協会連合会等が予想問題を検討のうえ、講習会を開いてくれますので是非参加してください。

年度出題課題
令和4年市民センター(ZEBを目指した建築物)
令和3年市街地に建つホテル
令和2年シェアオフィスのある事務所ビル
令和元年スポーツクラブのある複合商業施設
平成30年小都市に建つ市庁舎

出題科目と合格点

 建築設備士の2次試験は、「建築設備基本計画、建築設備基本設計製図」の2つに分かれており、下表となります。1次試験とは違い、記述と製図となります。

 合格点については公表されておらず、採点区分A〜Dに分けられ、「A」評価のみが合格となります。前述の合格率のとおり、2次試験の受験者の約半数が「A」評価とされています。

出題科目出題数出題内容
建築設備基本計画
(必須)
11問建築設備に係る基本計画の作成
建築設備基本設計製図
(選択)
5問空調・換気設備、給排水衛生設備又は電気設備のうち、
受験者の選択する一つの建築設備に係る設計製図の作成

建築設備基本計画

 建築設備基本計画の必須11問については、空調・換気設備、給排水衛生設備、電気設備から分野問わず出題され、例えば以下のような設問があります。1番目が空調・換気設備、2番目が給排水衛生設備、3番目が電気設備となっているとおり、建築設備基本設計製図の選択分野以外の基礎知識も問われます

  • 建築物中央にある吹抜を利用した自然換気方式を計画する場合、その換気方式の原理について一つ、その換気方式の計画に係る留意事項について二つ、具体的に記述せよ。
  • 1 階の厨房に設ける給排水管の配管計画の要点を、給水管について二つ、器具排水管について一つ、具体的に記述せよ。
  • 非常用自家発電設備における発電機回路に接続する負荷の名称を、防災負荷について三つ、保安負荷について二つ、発電機の運転に必要な負荷について一つ記入せよ。
令和4年度試験問題より

建築設備基本設計製図

 建築設備基本設計製図の選択5問については、選択分野を問わず下表になっています。第3問から第4問に関しては、「空調・換気、給排水衛生、電気」のどの分野を選択しても共通で出題されており、いわゆる「選択必須」と呼ばれています。

 建築設備基本計画同様、建築設備基本設計製図の選択分野以外の製図能力も問われます

第1問計算問題
 空調・換気:空調機の能力表など
 給排水衛生:機器表など
 電気:機器表、年間損失電力量など
第2問製図問題
 空調・換気:系統図
 給排水衛生:系統図
 電気:単線結線図
第3問空調・換気設備のダクト図選択科目を問わず共通
第4問給排水衛生設備の配管図選択科目を問わず共通
第5問電気設備の配置図選択科目を問わず共通

時間割

 2次試験の時間割は下記のようになっています。注意事項等説明のあと、全て同じ時間帯で行われ、5時間30分で実施されます。長丁場の試験となりますので、時間配分がとても重要となります。

 なお、途中で昼食を取ることが可能ですが、館外への外出は認められていません。

時刻時間内容
10時45分~11時15分注意事項等説明
11時~16時30分5時間30分建築設備基本計画、建築設備基本設計製図

受験準備講習会

 (一社)日本設備設計事務所協会連合会と(一社)電気設備学会が主催している、第二次試験のための受験準備講習会(通称、「講習会」)が例年開催されています。当該年度の課題建物に対する設備の特徴および出題傾向について解説がされます。

開催日程

 講習会の案内から講習会までの日程は下表になります。講習会は7月に何回かに分けて開催され、一番早い開催日での受講することは、言うまでもなく講習会後の自習学習を優位に進められます。

 地方の枠が少ない日程や開催時期の早い日程の講習会は申し込み開始すぐに定員に達してしまいますので、本気で合格を目指している人は注意が必要です。

 なお、出題課題によっては過年度の講習会資料でも対応可能ですので、フリマサイト等で探してみるのもよいかもしれません。残念なことに、当該年度の講習会資料も高額転売されてしまっている現状ですので、どうしても資料が必要な人は購入を検討してみてください。(そのような高額転売に頼らずとも、本サイトの過去問解説を元に合格できるように品質向上に努めています。)

スケジュール令和4年度
案内5月下旬5月30日
申し込み6月上旬6月6日 午前9時〜
講習会7月7月9日〜30日
札幌(20名)
東京(120名)x5回
大阪(120名)
福岡(70名)

時間割

 講習会の当日の時間割は下表のようになっています。正直なところ、講習会で配布される資料に大きな価値があり、当日の説明は時間もなくかなり省略されます。そのため、自分の選択科目の説明のみに受講している人や資料の受領後に帰っている人もいます。

時刻時間内容
9:00~12:103時間10分空調・換気設備
12:50~15:503時間給排水衛生設備
16:00~19:003時間電気設備

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